就活の自己分析に性格診断を活かす方法:HEXACOで強みを言語化する5ステップ
性格診断の結果は、そのまま自己PRになるわけではありません。結果は「強みの候補」を見つける手がかりで、自分が実際にとった行動(エピソード)で裏づけて、はじめてエントリーシート(ES)や面接で話せる形になります。手順は「診断を受ける→目立つファセットを2〜3個選ぶ→エピソードを集める→強みに言い換えて根拠をそろえる→面接で話せる形にする」の5ステップです。
この記事では、HEXACO(ヘキサコ)モデルの24ファセットを使った進め方を、研究と公的資料をもとに紹介します。企業の適性検査との違いや、結果を受け止めるときの注意点もあわせて説明します。
自己分析に性格診断を使う意味と限界
強みとして選ぶ特性は、自分を高く見積もりがちな特性に偏りやすい
自己分析で難しいのは、自分の強みを客観的に見ることです。神原・辻川(2020)は、関西の私立大学の社会科学系学部の4年生を対象に、2012年に就職活動について調査しました[1]。分析の対象は、民間企業を志望した156人です[1]。
学生には、強みとしてアピールした特性を選択肢から選んでもらいました[1]。このうち「誠実」「親切」「おおらか」「責任感」「まじめ・努力家」「几帳面」は、国内の研究で平均以上効果が確認されている特性です[1]。平均以上効果とは、多くの人が自分を平均的な人より高く評価することです[1]。
分類できた150人のうち、これらを強みに選んだ学生は94人(62.67%)でした[1]。平均以上効果が確認されていない特性(人気・知的・社交的・積極的・センスなど)を選んだ56人(37.33%)より多い結果です[1]。性格診断も自己報告なので、こうした偏りを取り除けるわけではありません。ただ、24のファセットという決まった物差しで自分を見直すことは、「まじめ」「責任感」より具体的な切り口を探す手がかりになると考えられます。
24ファセットという共通の言葉
HEXACOモデルは、性格を6つの因子で記述するモデルで、ビッグファイブ(5因子モデル)に代わりうる枠組みとして提案されています[2]。6つの因子は、正直さ-謙虚さ(H)、情緒性(E)、外向性(X)、協調性(A)、誠実性(C)、経験への開放性(O)です[2]。日本人492人(平均年齢20.4歳)を対象にした研究でも、6つの因子が独立に見出されています[3]。各因子はさらに4つずつ、合わせて24のファセットに分かれ、HEXACOの公式サイトにそれぞれの説明が載っています[4]。モデルの全体像はHEXACOモデルとはで紹介しています。
性格と仕事の成果の関係は大きくない
性格と仕事の成果については、ビッグファイブを使ったよく知られたメタ分析(複数の研究をまとめて分析する方法)があります[5]。117件の研究(合計23,994人)をまとめた結果、誠実性は5つの職業グループすべてで、仕事の成果の指標と一貫して関連していました[5]。ただし関連の大きさは、測定の誤差などを補正した推定値でρ = .22、補正前の相関でr = .13でした[5]。関連はあるものの、性格だけで仕事の成果が決まるほどの大きさではないと考えられます。詳しくは性格で仕事の向き不向きは決まる?で解説しています。性格診断は、強みの「候補」を見つける道具として使うのが現実的です。
自己分析を始める時期:就活の日程
政府は、2027年度卒業・修了予定者(2028年3月に卒業・修了する予定の人)の就職・採用活動について、次の日程を要請しています[6, 7]。目安として、4年制大学では2026年度に3年生の人の多くがこの学年にあたります。
- 広報活動の開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動の開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
ただし、この要請は企業の採用活動を法的に拘束するものではありません[6]。政府の資料が紹介する内閣府の学生調査では、約7割がインターンシップなどに参加していました[6]。卒業・修了前年度の9月以前に初めてESを提出した学生も、約4割いました[6]。2028年度以降に卒業・修了する人の日程は、経済界や大学側と議論を行いながら、見直しの検討を進めるとされています[6]。
ESを書く時期が早まりうることを考えると、自己分析は早めに少しずつ進めておくと安心です。
ステップ1:診断を受ける(ふだんの自分のまま答える)
まずは性格診断を受けて、結果を手元に用意します。ここでは当サイトの診断を例に説明します。
HEXAINSIGHTの診断(96問、約10〜15分)は、24のファセットをそれぞれ4問ずつで測ります。ファセット得点は4問の平均、因子得点は4つのファセット得点の平均で、どちらも1.0〜5.0の範囲です。質問項目は独自に作成したもので、公式のHEXACO-PI-Rとは独立したツールです(運営者情報)。
答えるときは、「こうありたい自分」や「企業に好まれそうな自分」ではなく、ふだんの自分を思い浮かべてください。選考の場面での性格検査については、33件の研究をまとめたメタ分析があります[8]。仕事の応募者は応募者でない人に比べて、ビッグファイブの誠実性(d = .45)や情緒安定性(d = .44)などの得点が高く出ていました[8]。著者らは、これを応募者が回答をゆがめた(faking)結果と解釈しています[8]。dは、2つの集団の平均の差の大きさを表す指標です。
自己分析のための診断で自分を良く見せても、出てくるのは「なりたい自分」の姿です。実際に話せるエピソードとは、つながりにくくなります。
- 学業やアルバイトなど1つの場面ではなく、日ごろの自分全体を思い浮かべる
- 迷った質問は考えすぎず、近いほうを選ぶ
- 時間に余裕があり、落ち着いて答えられるときに受ける
結果画面でスコアの基準になっている3.0は、1〜5の尺度の真ん中の値(中間点)です。当サイトは回答をサーバーに保存していないため、3.0は他の利用者と比べた平均ではありません(プライバシーポリシー)。結果は「他人より高いか」ではなく、「自分の中でどれが高く、どれが低いか」を見るためのものです。
ステップ2:目立つファセットを2〜3個選ぶ
結果が出たら、6つの因子だけでなく、24のファセットまで目を通します。ビッグファイブの研究ですが、5つの因子とそれを構成するファセットで、40の行動指標の予測を比べた研究があります[9]。ファセットのほうが目立って良く、使うファセットの数を因子の数にそろえても同様でした[9]。自己分析を調べた研究ではありませんが、ファセットまで見ておくと、自分の具体的な行動と結びつける手がかりが増えると考えられます。
選び方の目安は次のとおりです。
- 自分の中で特に高いファセットを1〜2個、特に低いファセットを1個ほど選ぶ
- 0.2〜0.3程度の差にはこだわらない(1ファセットは4問なので、1問の回答が1段階変わるだけで0.25動きます。画面の表示は小数第1位までです)
- 友人など、他の人の結果と比べて選ばない
- 意味がはっきりしないときは、定義を確かめる
ファセットの意味は、HEXACOの公式サイトにある尺度の説明が参考になります[4]。たとえば勤勉さ(Diligence)は、懸命に働く傾向とされています[4]。探究心(Inquisitiveness)は、自然や人間の世界について情報や経験を求める傾向です[4]。社交性(Sociability)は、会話や人との交流、パーティーを楽しむ傾向です[4]。24ファセットの意味はHEXACOの24ファセット一覧にまとめています。
例:Aさん(架空の例)
Aさんの結果では、勤勉さが4.5、探究心が4.0と高く、社交性は2.5と低めでした。ほかのファセットは3点前後に集まっています。Aさんは、高い2つ(勤勉さ・探究心)と低い1つ(社交性)を、自己分析の出発点に選びました。
低いファセットを選ぶのは、弱みを探すためではありません。低い側にも、その人なりのやり方や工夫が隠れていることがあるからです。
ステップ3:エピソードを集める(「思い」より「行動」で)
選んだファセットごとに、それが表れたと思う場面を書き出します。ここで意識したいのは、当時の気持ちや動機よりも、実際にとった判断や行動を中心に集めることです。
先に紹介した神原・辻川(2020)は、強みを理解するときに「実際に行った判断や行動」と「考えていたことや動機」をどのくらい重視したかも尋ねています[1]。2つの合計が100になるように振り分ける方法です[1]。その結果、行動を重視した学生ほど、平均以上効果が確認されている特性を強みに選びにくい傾向がありました[1]。また、強みを理解する段階で行動を重視した度合いは、書類選考の通過率と弱い正の相関(r = .241)を示しました[1]。
一方で、一次面接・二次面接の通過率や内々定の獲得とは、統計的に意味のある関連は見られませんでした[1]。また、この研究は1つの大学の学生が自分のやり方を振り返って答えた、2012年の調査です[1]。行動を重視すれば選考に通る、という因果関係を確かめた研究ではありません。
1つの場面について、次の3点をメモしておくと、後で使いやすくなります。
- 状況:いつ、どこで、どんな課題があったか
- 行動:自分が何を判断し、何をしたか
- 結果:どうなったか、周りからどんな反応があったか
思い出すきっかけとして、ファセットごとに問いを立てる方法もあります。勤勉さなら「大変でも力を注いだことは?」、探究心なら「調べ始めたら止まらなかったことは?」のように考えます。
周りの人にも聞いてみる(他己分析)
自分では気づきにくい面は、周りの人に聞くと見えてくることがあります。米国の大学の研究者による研究では、参加者165人が自分の性格を評価し、友人4人と初対面の人(最大4人)もその人を評価しました[10]。それぞれの評価を、行動を測るテストの結果と照らし合わせています[10]。
その結果、この研究の用語でいう神経症傾向(neuroticism)に関わる特性は、本人が最もよく判断できていました[10]。知性(intellect)に関わる特性は友人が最もよく判断し、外向性に関わる特性はどの立場でも同じくらいの精度でした[10]。友人などに聞くときは、「私が力を注いでいた場面を覚えている?」のように、ファセットに沿って具体的な場面を尋ねてみましょう。自分の行動を思い出す手がかりになるかもしれません。
Aさんのエピソード(架空の例)
- 勤勉さ:ゼミの研究発表で、データの集計が予定より遅れた。毎日1時間ずつ作業を続け、締め切りに間に合わせた
- 探究心:アルバイト先のカフェで、季節によって売れる商品が変わる理由が気になり、店長に聞いたり記録をつけたりした
- 社交性(低め):大人数の集まりは苦手だが、サークルの新入生には一人ずつ声をかけて、じっくり話を聞いた
ステップ4:強みに言い換え、根拠をそろえる
エピソードが集まったら、ファセットの名前を、ESや面接で伝わる言葉に言い換えます。ファセット名は性格を表す専門用語なので、そのままでは「何ができるのか」が伝わりにくいからです。公式サイトの説明をもとにした言い換えの例を挙げます[4]。
- 勤勉さ → 努力を惜しまず取り組む力(懸命に働き、力を尽くすことをいとわない傾向)
- 整理性 → 物事を整え、順序立てて進める力(特に身の回りの秩序を求め、整理整頓し、構造化された進め方を好む傾向)
- 完璧主義 → 細部まで確認してミスを防ぐ力(徹底していて細部に気を配り、誤りを入念に確かめる傾向)
- 社会的大胆さ → 初対面の人や集団の中でも臆せず発言できる力(知らない人に近づき、集団の中で発言することをいとわない傾向)
- 探究心 → 疑問を自分で調べて理解する力(自然や人間の世界について情報や経験を求める傾向)
「誠実さ」(正直さ-謙虚さのファセット)と「誠実性」(C因子)は別のものなので、言い換えるときは混同しないようにしましょう。誠実さは人との関係で偽りのない態度をとる傾向、公正さは不正や腐敗を避ける傾向とされています[4]。この因子については正直さ-謙虚さ(H)とはで詳しく解説しています。
研究から見る「表れやすい場面」
HEXACOの6因子が、それぞれ1つの広い領域と固有に結びついているかを調べた、大規模なメタ分析があります[11]。426の個別のメタ分析、436の独立したサンプル、3,893の効果量をもとに、この対応が支持されました[11]。たとえば誠実性は「義務(duty)」、経験への開放性は「探索(exploration)」、外向性は「社交(sociality)」の領域と結びついていました[11]。
この結果は因子についてのものですが、エピソード探しの手がかりにもなりそうです。たとえば誠実性のファセットなら責任や役割を果たした場面を、経験への開放性のファセットなら新しいことを調べたり試したりした場面を思い出してみる方法があります。
強みの裏側も準備する
高い得点にも課題がありえます。たとえば柔軟性(Flexibility)が高い人は、言い争いを避けて人の提案に合わせるとされ、それが無理のある提案であっても合わせることがある、と説明されています[4]。弱みや課題について聞かれたときに備えて、こうした「強みの裏側」と、それにどう向き合っているかをセットで整理しておきましょう。
作り話のエピソードや、結果に合わせて話を大きくすることはやめましょう。深掘りの質問に具体的に答えにくくなり、かえって説得力を損なうおそれがあります。診断結果と自分の経験が合わないときは、経験のほうを優先して構いません。
Aさんの自己PRの下書き(架空の例)
「私の強みは、目標に向けて努力を惜しまないことです。ゼミの研究発表では、データの集計が予定より遅れましたが、毎日1時間ずつ作業を続けて締め切りに間に合わせました。仕事でも、時間のかかる課題に最後まで向き合いたいと考えています。」
Aさんは、社交性が低めであることも隠しませんでした。「大人数の場より、一人ひとりとじっくり話すほうが得意」という、自分なりの人との関わり方として説明できるように準備しました。
ステップ5:面接で話せる形にする
話す順番は、次のようにすると聞き手に伝わりやすくなります。
- 結論:私の強みは〇〇です
- エピソード:状況・行動・結果を具体的に
- 生かし方:その強みを、志望する仕事でどう使いたいか
3つ目の「生かし方」を考えるには、志望する企業の仕事内容を知る必要があります。ここで、自己分析と業界・企業研究がつながります。
神原・辻川(2020)では、ESや面接で強みを伝える段階で行動を重視した度合いも、書類選考の通過率と弱い正の相関(r = .160)がありました[1]。ただし、自己分析の段階で行動を重視した度合いなどを統計的に考慮すると、その関連は見られなくなりました[1]。著者らは、伝え方を工夫する前の自己分析の段階から、自分の行動を振り返ることを提案しています[1]。ステップ3で集めた行動のエピソードが、ここで生きてきます。
面接で何が評価されているかについては、採用面接の研究をまとめたメタ分析があります[12]。47件の実際の面接研究にある338の評価を分析したところ、最も多く評価されていたのは基本的な性格と対人場面で使うスキルで、次いで知的能力、仕事の知識や技能でした[12]。ただし、2001年に発表された研究で、日本の面接を対象にしたものではありません[12]。
厚生労働省は、公正な採用選考の基本の1つとして、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことを挙げています[13]。面接で伝えるのは、あなたの適性や能力を示す具体的な根拠です。
深掘りの質問も想定しておきましょう。「なぜそうしたのか」「ほかの場面でも同じようにできたか」「うまくいかなかったことはあるか」などです。ステップ3で集めた別のエピソードを予備として用意し、友人や家族に面接官役を頼むと、他己分析を兼ねた練習にもなります。
企業の適性検査(SPIなど)との違い
選考では、企業が適性検査を使うことがあります。その1つが、リクルートマネジメントソリューションズのSPI(総合適性検査)です[14]。公式サイトによると、SPIは学歴や職歴などの表面的な情報だけでなく、個人の資質に基づく選考を支援するという考えから、1974年に作られました[14]。
SPIは「能力検査」と「性格検査」で構成されています[14]。能力検査は職種の違いを越えて共通して求められる知的能力を測り、性格検査は性格的な特徴に加えて、どのような業務内容や職場の雰囲気に適応しやすいかを数値化するとされています[14]。
企業の適性検査と、自己分析のための性格診断は、目的も質問も異なる別の道具です。
- 目的:企業の適性検査は、企業が選考に使うためのもの。HEXAINSIGHTの診断は、自分を理解するためのもの
- 質問と尺度:それぞれ独自の質問と尺度で作られている。HEXAINSIGHTの診断は、SPIなどの結果を予測するように作られたものではない
- 使い方:HEXAINSIGHTの結果は、エピソードを探し、言葉にするための手がかりとして使う
企業の適性検査には、正直に答えてください。 偽って答えた結果は、自分に合う仕事や職場を考える材料になりません。当サイトでは、適性検査で自分を良く見せるための答え方は紹介しません。
注意点:診断結果の受け止め方
性格診断を自己分析に使うときは、次の点に気をつけてください。
- 自己報告式の限界:質問紙の結果は、自分で自分をどう見ているかを反映したものです。本人と友人では、よく見えている特性が異なるという研究もあります[10]。
- 研究の範囲:この記事で紹介した研究の多くは、ビッグファイブの研究や海外のデータに基づいています[5, 8–10, 12]。
- この記事の5ステップ:研究の知見を参考にした手順の一例で、この手順そのものの効果を研究で確かめたものではありません。選考の結果を約束するものでもありません。
- 性格の変化:今の結果を、一生変わらないものと決めつける必要はありません。性格が変わる可能性については性格は変えられる?で取り上げています。
- 人の評価に使わない:友人と結果を見せ合って話すのはよいですが、スコアで人を評価したり選別したりする使い方はしないでください。
この診断は医療上の診断ではありません。心身の不調があるときは、医療機関などの専門家に相談してください。
まとめ
- 診断結果は強みの「候補」です。自分の行動のエピソードで裏づけると、自己PRに使える形になります。
- ファセットは自分の中の高低で選び、0.2〜0.3程度の差にはこだわりません。
- エピソードは、当時の思いより、実際にとった行動を中心に集めます。
- 企業の適性検査は別の道具です。適性検査には正直に答えましょう。
- 性格と仕事の成果の関係は大きくなく、診断結果で選考の結果が決まるわけではありません。
自己分析の出発点として自分の24ファセットを確かめたい方は、無料のHEXACO性格診断(96問・約10〜15分)をお試しください。結果の読み方はHEXACOの24ファセット一覧も参考になります。
参考文献
- 神原歩・辻川典文 (2020). 自己理解方略が強み特性の認知および就職活動の選考結果に及ぼす影響. キャリア教育研究, 38(2), 31–43. https://doi.org/10.20757/jssce.38.2_31
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