HEXACOの24ファセット一覧:6つの因子を構成する性格の要素と読み方
HEXACO(ヘキサコ)モデルの6つの因子は、それぞれ4つのより狭い特性「ファセット」に分かれていて、全部で24のファセットがあります[1, 2]。公式の質問紙HEXACO-PI-Rの100項目版・200項目版には、因子と因子の間に位置する25番目の尺度「利他性(Altruism)」も含まれています[2, 3, 8]。ファセットまで見ると、同じ因子得点の人どうしの違いが見えてきます。研究でも、予測する対象によってはファセットのほうが因子より多くの情報をもたらすと報告されています[4–6]。
ファセットとは:因子・ファセット・質問項目の3つの層
HEXACOモデルは、性格を「正直さ-謙虚さ」「情緒性」「外向性」「協調性」「誠実性」「経験への開放性」の6つの因子で記述するモデルです[1]。モデル全体の成り立ちはHEXACOモデルとはで紹介しています。性格の構成要素は、次の3つの層で考えるとわかりやすくなります。
- 因子(factor):最も大きなまとまり。HEXACOモデルでは6つ
- ファセット(facet):因子を構成する、より狭い特性。1つの因子に4つずつ、計24
- 質問項目(item):ファセットを測るための、一つひとつの質問
英語版HEXACO-100を、オンラインの自己報告100,318人と、大学生2,868人の自己報告・他者評定で調べた大規模な研究があります[7]。そこでは、6つの因子はそれぞれのファセットで、利他性を含む25のファセットはそれぞれの項目で定義される階層構造が、はっきり支持されました[7]。
ファセットができるまで
HEXACOの質問紙は2000年に作成が始まり、ファセット単位の版は2004年に発表されました[1, 2]。当時は1ファセット8項目の192項目版と、4項目の96項目版がありました[2]。改訂版HEXACO-PI-Rでは、外向性の「表現性(Expressiveness)」が「社会的自尊心(Social Self-Esteem)」に置き換えられました[2]。表現性の項目は翻訳が難しく、一部の翻訳版で外向性との結びつきが弱かったことが理由の1つです[2]。
日本でも、日本人492人(平均年齢20.4歳)を対象にHEXACO-PIの性質を調べた研究があります[11]。心理測定的な性質は満足できる水準で、想定された6つの因子が独立に見出されました[11]。
「24タイプ」ではなく「24ファセット」
「24」から「24タイプ」を想像する方もいるかもしれませんが、HEXACO-PIは24のファセット単位の尺度で構成されています[1]。公式の採点キーでは、ファセットごとに項目の平均点を得点として求めます[8]。つまり、人をタイプに振り分けるのではなく、各ファセットの得点の高低の組み合わせとして性格を描きます。タイプ診断との違いはMBTIなどのタイプ診断とHEXACOの違いで解説しています。
公式の質問紙の長さ
公式の100項目版(HEXACO-100)は、24ファセットが各4項目、利他性が4項目で、合計100項目です[8]。60項目版(HEXACO-60)は各因子10項目で、回答時間がかなり限られる場合のための版です[2, 9]。公式サイトには、60項目版と100項目版の日本語の自己報告版が掲載されています[10]。
24ファセット一覧
当サイトの質問項目は独自のものなので、以下は各ファセットの意味の目安です。HEXACO公式サイトの尺度の説明(Scale Descriptions)をもとに、中心となる意味を1行にまとめました[3]。得点が高い人・低い人の詳しい説明は、公式サイト(英語)で読めます[3]。
得点の高低は人の価値を決めるものではなく、高低どちらか一方が常に望ましいとは限りません。たとえば公式の説明では、柔軟性が高い人は無理のある提案にまで合わせることがあり、恐怖心が低い人は比較的勇敢でタフだとされています[3]。「例」は架空の場面です。
正直さ-謙虚さ(Honesty-Humility)
- 誠実さ(Sincerity):人に対して裏表なく、本心で接する傾向[3]。
- 公正さ(Fairness):不正やごまかしを避ける傾向[3]。
- 貪欲回避(Greed Avoidance):ぜいたくな富や高級品、高い地位にあまりこだわらない傾向[3]。
- 謙虚さ(Modesty):控えめで、自分を人より特別だと考えない傾向[3]。
例(架空):誰も見ていなくても、経費の端数をごまかさない(公正さ)。
情緒性(Emotionality)
- 恐怖心(Fearfulness):恐怖を感じやすい傾向。公式の説明では、とくにけがなど身体的な危険への恐れが例に挙がっています[3]。
- 不安感(Anxiety):いろいろな場面で心配しやすい傾向[3]。
- 依存性(Dependence):人からの心の支えを必要とする傾向[3]。
- 感傷性(Sentimentality):人との情緒的な結びつきを強く感じる傾向[3]。
例(架空):友人の引っ越しを見送るときに涙ぐむ(感傷性)。
外向性(eXtraversion)
- 社会的自尊心(Social Self-Esteem):とくに人との関わりの中で、自分を肯定的にとらえる傾向[3]。
- 社会的大胆さ(Social Boldness):さまざまな対人場面での気楽さや自信[3]。
- 社交性(Sociability):会話や人づきあい、集まりを楽しむ傾向[3]。
- 活発さ(Liveliness):ふだんの熱意や元気の大きさ[3]。
例(架空):会議で、自分から意見を述べる(社会的大胆さ)。
協調性(Agreeableness)
公式サイトでは「Agreeableness (versus Anger)」、つまり怒りと対になる特性として表記されています[3]。
- 寛容さ(Forgivingness):自分を傷つけた相手にも、再び信頼や好意を向けられる傾向[3]。
- 優しさ(Gentleness):人に穏やかに接し、厳しく裁かない傾向[3]。
- 柔軟性(Flexibility):人と妥協し、協力しようとする傾向[3]。
- 忍耐力(Patience):怒らずに落ち着いていられる傾向[3]。
例(架空):納得できない提案にも、言い争うより合わせてしまう(柔軟性)。
誠実性(Conscientiousness)
- 整理性(Organization):とくに身の回りに秩序を求める傾向[3]。
- 勤勉さ(Diligence):努力を惜しまず、熱心に取り組む傾向[3]。
- 完璧主義(Perfectionism):徹底していて、細部まで気を配る傾向[3]。
- 慎重さ(Prudence):よく考えてから動き、衝動を抑える傾向[3]。
例(架空):提出前に資料を何度も見直す(完璧主義)。
経験への開放性(Openness to Experience)
- 美的評価(Aesthetic Appreciation):芸術や自然の美しさを楽しむ傾向[3]。
- 探究心(Inquisitiveness):自然や人間の世界について知り、経験しようとする傾向[3]。
- 創造性(Creativity):新しい工夫や試みを好む傾向[3]。
- 非慣習性(Unconventionality):ふつうと違うものを受け入れる傾向[3]。
例(架空):知らない分野の本を手に取る(探究心)。
読み違えやすいポイント:似たファセットと利他性
名前や印象が似ているファセット
名前や日常語の印象が似ていても、定義を比べると別のことを表すファセットがあります[3]。結果を読むときは、次の違いに注意してください。
- 「誠実さ」と「誠実性」:誠実さは正直さ-謙虚さのファセットで、人に裏表なく接するかどうかです[3]。誠実性は、整理性・勤勉さ・完璧主義・慎重さをまとめた因子の名前です[3]。同じように、「謙虚さ」はファセット、「正直さ-謙虚さ」は因子の名前です。
- 「依存性」と「社交性」:依存性は困ったときに心の支えを求めるかどうか、社交性は会話や集まりを楽しむかどうかです[3]。一人の時間を好みながら、悩みは誰かに聞いてほしい、という組み合わせもありえます。
- 「感傷性」と「優しさ」:感傷性(情緒性)は人への愛着や共感の強さ、優しさ(協調性)は人を評価するときの寛大さです[3]。
- 「柔軟性」と「非慣習性」:協調性の柔軟性は、人と妥協し協力するかどうかを表します[3]。変わった考えや人を受け入れるかどうかは、経験への開放性の非慣習性です[3]。
人前での緊張は、公式の説明と当サイトの質問とで扱いが異なります。公式の説明では、人前で話すときの気後れは社会的大胆さが低い人の例に挙がっています[3]。一方、HEXAINSIGHTの診断では、人前で話すときの緊張は不安感の質問に含まれます。会議やグループでの発言は社会的大胆さ、初対面の人と会話を始めることは主に社交性の質問で尋ねています。
「不安感」「依存性」は、日常的な性格の傾向を表すファセットの名前です。臨床で使われる用語とは別のもので、この得点から心の健康状態がわかるわけではありません。
因子の間にある「利他性(Altruism)」
HEXACO-PI-Rの100項目版・200項目版には、24ファセットとは別に「利他性(Altruism versus Antagonism)」という尺度があります[2, 8]。人への思いやりや情のもろさを測る尺度で、人を傷つけることを避け、助けを必要とする人に寛大に接する傾向を表します[2, 3]。
この尺度は2006年に、因子と因子の間に位置する特性を測る新しい尺度の1つとして発表されました[12]。性格を表す言葉の研究(語彙研究)では、思いやりにあたる特性が正直さ-謙虚さ・協調性・情緒性の間を「移動」しやすいとされています[2]。この尺度は、その特性に固有の部分をとらえるためのものです[2]。6因子の得点の計算には含めず、現在は25番目のファセット尺度と位置づけられています[2, 8]。
HEXAINSIGHTの診断(96問)が測るのは24ファセットで、利他性は含まれていません。 公式版の結果と見比べるときは、この違いに注意してください。
なぜファセットまで見るのか
因子得点は4つのファセットをまとめた値なので、要約としてはわかりやすい一方、中身の違いは見えにくくなります。
- 行動の予測:HEXACOではなくビッグファイブの研究ですが、5つの因子とそのファセットを、40の行動指標の予測力で比べたものがあります[4]。どちらも多くの指標を予測しましたが、ファセットのほうが目立って良く、ファセットの数を因子の数にそろえても同様でした[4]。ファセットが説明した指標のばらつきには、因子では予測できなかった部分が大きく含まれていることがよくありました[4]。
- 幸福感(ウェルビーイング):ビッグファイブとHEXACOの因子と幸福感の関係をまとめたメタ分析(n = 334,567、k = 462)があります[5]。この論文では、HEXACO-PI-R(n = 465)を含む4つの大規模データで、ファセットによる上乗せも調べています[5]。ファセットによる予測は、因子による予測よりおおむね20%ほど良く、その差は幸福感の側面によって異なりました[5]。この20%は4つの質問紙のデータ全体での典型的な値で、HEXACO-PI-Rだけの値ではありません[5]。
- 職場での逸脱行動:HEXACOの因子・ファセットと、職場での逸脱行動(workplace deviance)との関係を調べたメタ分析があります(k = 29)[6]。因子とファセットを直接比べた再分析(k = 9)も行われています[6]。ファセットは全体として因子より予測が良く、とくに公正さ(Fairness)1つで、6因子すべてを合わせたのとほぼ同じだけの分散を説明しました[6]。
同じ研究では、2つの現象も見られました[6]。正直さ-謙虚さのファセットの間の「マスキング(masking)」と、経験への開放性のファセットの間の「相殺(cancellation)」です[6]。マスキングは、因子より強く関係するファセットと弱く関係するファセットが混ざり、強い関係が因子得点では薄まって見えることです[6]。この研究では、公正さは因子より強く、貪欲回避と謙虚さは因子より弱く逸脱行動と関係していました[6]。相殺は、関係の向きが逆のファセットが同じ因子の中にあり、因子にまとめると関係が打ち消されることです[6]。経験への開放性では、美的評価と非慣習性で関係の向きが逆で、因子としては有意な関係が見られませんでした[6]。
因子得点だけを見ていると、見落とされる情報があるということです。 ただし、同じ研究でも、誠実性は因子のほうがどのファセットよりも強く逸脱行動と関係していました[6]。ファセットの優位の大きさは予測する対象によって異なり、一概に「ファセットのほうが優れている」とは言えません。また、これらは集団の傾向を調べた研究で、ファセット得点で人を採用・選別してよいという意味ではありません。
例:外向性が同じ3.50の2人(架空の例)
Aさんの外向性のファセットは、社会的自尊心3.5、社会的大胆さ2.5、社交性4.5、活発さ3.5だとします。Bさんは、社会的自尊心3.5、社会的大胆さ4.5、社交性2.5、活発さ3.5です。2人とも外向性は3.50ですが、Aさんは雑談は好きでも会議での発言は苦手、Bさんは会議で意見を言えても休日は一人で過ごしたい、という違いがありえます。
HEXAINSIGHTでの測り方と結果の読み方
HEXAINSIGHTの診断(96問)では、24ファセットをそれぞれ4問ずつで測ります。回答は1〜5の5段階で、逆の向きの質問(逆転項目)は点数を反転させてから計算します。ファセット得点は4問の平均、因子得点はその因子に属する4つのファセット得点の平均です。どちらも1.0〜5.0の範囲で、3.0が中間です。
質問項目は独自に作成したもので、公式のHEXACO-PI-Rとは独立したツールです(運営者情報)。2004年の版にも96項目版がありましたが[2]、問題数が同じでも別のものです。公式版と同じ得点になるとは限りません。
結果を読むときのポイントは次のとおりです。
- 因子の中のばらつきを見る:4つのファセットがそろっているのか、高いものと低いものが混ざっているのかで、同じ因子得点でも意味が変わります。
- 因子得点を動かしているファセットを探す:たとえば誠実性が高いとき、整理性と勤勉さのどちらが効いているのかで、日常での表れ方は違ってくると考えられます。
- 小さな差にこだわりすぎない:1ファセットは4問なので、1問の回答が1段階変わるだけで、ファセット得点は0.25動きます。なお、結果画面では小数第1位に丸めて表示されます。わずかな差より、はっきりした高低やパターンに注目しましょう。
- 3.0は他の人の平均ではない:結果画面の「中間点(3.0)との比較」にある3.0は、1〜5の尺度の真ん中の値です。当サイトは回答や診断スコアをサーバーに保存せず、お使いのブラウザにだけ保存しています(プライバシーポリシー)。そのため、他の利用者と比べた平均は出していません。
注意点:ファセット得点の限界
公式の採点キーは、100項目版や60項目版のファセット尺度はとても短く、高い内的一貫性(項目どうしのまとまり)を持つことは意図していないと注記しています[8]。そのうえで、概念的に関係のある指標の予測や、因子の指標として使うことを勧めています[8]。
同じ人が時間をおいて回答したときの得点の相関を、再検査信頼性と呼びます。英語版のHEXACO-100とHEXACO-60について、約13日の間隔でこれを調べた研究があります(N = 416、平均年齢26.9歳、複数の国の参加者)[13]。HEXACO-100の再検査信頼性の中央値は、因子で.88、ファセットで.81、項目で.65でした[13]。HEXACO-60では、因子で.86、ファセットで.76でした[13]。ファセットは因子よりやや低いものの、2週間ほどの間では比較的安定していたことになります。ただし、これは公式版の数字で、HEXAINSIGHTの質問項目について調べた値ではありません。
言語の違いにも注意が必要です。HEXACO-100を16の言語(N = 30,484)で比べた研究があります[14]。因子の構造と、ファセットと因子の結びつきの強さ(因子負荷)は、言語間で同等とみなせる結果でした[14]。一方、ファセットの得点の基準点まで含めた等価性(スカラー不変性)は全体としては支持されず、その程度はファセットや因子によって大きく異なりました[14]。そのため著者らは、言語(国)の間で平均点の違いを解釈するには、さらに研究が必要だとしています[14]。
また、自己報告式の質問紙の結果は、自分で自分をどう見ているかを反映したものです。性格の変化については性格は変えられるのかも参考にしてください。
この診断は医療上の診断ではありません。得点にかかわらず、心身の不調があるときは、医療機関などの専門家に相談してください。
まとめ
- HEXACOモデルの6因子は、それぞれ4つのファセットに分かれ、全部で24ファセットあります。
- 「誠実さ」と「誠実性」、「柔軟性」と「非慣習性」のように、名前や印象が似ていても別のことを表すファセットがあります。
- 公式の100項目版・200項目版には因子の間に位置する利他性もありますが、HEXAINSIGHTの診断(96問)では測っていません。
- 予測する対象によっては、ファセットが因子にない情報をもたらすと報告されています。
- 結果は因子の中のばらつきに注目し、1ファセット4問の小さな差にはこだわりすぎないことが大切です。
自分の24ファセットのパターンを確かめたい方は、無料のHEXACO性格診断(96問・約10〜15分)をお試しください。
参考文献
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