性格の「相性」は科学的にある?似た者同士カップルの満足度を研究で検証
「性格が似ている二人ほどうまくいく」という考えは、研究ではあまり支持されていません。オーストラリア・イギリス・ドイツの夫婦調査では、一人ひとりの性格の影響を差し引くと、似ている度合いで説明できた満足度の個人差は0.5%未満でした[1]。また、すでに関係のある二人では、実際に似ていることより「似ていると感じること」のほうが、相手に惹かれる気持ちと結びついていました[2]。
この記事では、「相性」の調べ方、HEXACO(ヘキサコ)モデルの研究、MBTIの相性表の受け止め方を、論文をもとに整理します。
研究では「相性」をどう調べるか
性格の組み合わせと関係の満足度については、大きく2つの見方が論じられてきました[3]。
- 類似性仮説:二人の特性の水準が似ているほど、惹かれる気持ちや関係への適応が高まるという見方[3]
- 相補性仮説:正反対の二人が惹かれ合い、一部の性格に違いがあるほうが満足しやすいという見方[3]
ただ、二人の得点を見比べるだけでは、どちらが正しいかはわかりません。Dyrenforthらは、性格と満足度の関係を次の3つの効果に分けて調べました[1]。
- 行為者効果(actor effect):自分の性格が、自分の満足度と関係すること
- パートナー効果(partner effect):相手の性格が、自分の満足度と関係すること
- 類似性効果(similarity effect):二人が似ていることそのものが、満足度と関係すること
たとえば、満足度と結びつきやすい特性を二人とも高く持っていれば、「似ていて仲が良い」ように見えます。しかしそれは、一人ひとりの特性の効果かもしれません。そこで、前の2つを差し引いても、似ていることに上乗せの効果があるかを確かめます[1]。
もう1つ大切なのが、「実際に似ていること(実際の類似性)」と「似ていると感じること(知覚された類似性)」の区別です。前者は二人の特徴が実際にどれだけ一致しているか、後者は本人が相手を自分に似ていると感じている程度を指します。この2つでは、研究結果が異なります[2]。
似た者同士は惹かれ合う?「実際に似ている」と「似ていると感じる」
Montoyaらは、313件の実験室研究・現場研究から得た460の効果量をメタ分析(複数の研究結果を統計的にまとめる方法)しました[2]。その結果、相手に惹かれる気持ちは、実際の類似性(r = .47)とも、知覚された類似性(r = .39)とも、有意で大きな関連を示しました[2]。r は相関係数(−1〜1)で、0から離れるほど結びつきが強いことを表します。
ただし、実際の類似性が効いていたのは、相手とやりとりをしない研究や、短いやりとりだけの研究でした[2]。すでに関係のある二人を調べた研究では、有意ではありませんでした[2]。一方、知覚された類似性は、すでに関係のある二人の研究を含むどの種類の研究でも、惹かれる気持ちを予測していました[2]。
すでに関係のある二人では、実際に似ているかよりも、似ていると感じているかのほうが、惹かれる気持ちと結びついていたことになります。 なお、このメタ分析が調べたのは、満足度ではなく相手に惹かれる気持ちです[2]。
では、実際のカップルはどのくらい似ているのでしょうか。Horwitzらは、199件の研究から集めた480のパートナー間の相関をメタ分析しました[4]。さらにイギリスの大規模データ(UK Biobank、最大79,074組の男女のカップル)で133の特性を調べました[4]。メタ分析した22の特性の相関は、外向性の r = 0.08 から政治的な価値観の r = 0.58 まで幅がありました[4]。
- 相関が高かったもの:政治的・宗教的な態度、学歴、一部の物質使用に関する特性[4]
- ビッグファイブの性格特性:外向性 .08、神経症傾向 .11、協調性 .11、誠実性 .16、開放性 .21 で、いずれも低め[4]
カップルは、性格よりも価値観や学歴などで似ている傾向が強いといえます[4]。性格の相関も小さいながらプラスで、正反対の性格どうしが組みやすいという結果ではありませんでした[4]。ただし、これはカップルどうしがどれだけ似ているかを表す数字で、満足度を調べたものではありません[4]。また、多くの特性で研究ごとのばらつきが大きいことも報告されています[4]。
「夫婦は長く一緒にいるうちに似てくる」とも言われます。これを夫婦1,296組(結婚期間は平均19.8年)で調べた研究は、結婚年数の長い夫婦ほど似ているかを一時点のデータで比べました[5]。その結果、似ていくことを示す証拠は分析によって一貫しませんでした[5]。著者らは、このデータでは相手を選ぶ段階での類似のほうが説明として有力だとし、攻撃性に関わる側面は例外かもしれないと述べています[5]。
満足度を左右するのは「組み合わせ」より一人ひとりの特性
3か国の大規模調査:似ていることの上乗せは満足度のばらつきの0.5%未満
Dyrenforthらは、オーストラリア(N = 5,278)、イギリス(N = 6,554)、ドイツ(N = 11,418)の、全国を代表する夫婦のサンプルで、ビッグファイブの性格特性による3つの効果を比べました[1]。
- 行為者効果:関係満足度の個人差(ばらつき)の約6%、人生満足度の10〜15%を説明[1]
- パートナー効果:関係満足度の1〜3%、人生満足度の1〜2%を説明。特に大きかったのは、相手の協調性・誠実性・情緒の安定性[1]
- 類似性効果:行為者効果とパートナー効果を差し引くと、どちらの満足度でも一貫して0.5%未満[1]
「情緒の安定性」は神経症傾向の低さを指し[6]、怒りを含まず感傷性を含むHEXACOの「情緒性」とは異なります[6]。協調性の中身も両モデルで違います[6]。詳しくはHSPと情緒性・神経症傾向の関係と正直さ-謙虚さ(H)とはで解説しています。
メタ分析:相手の性格と自分の満足度
Malouffらは、19のサンプル、計3,848人のデータをメタ分析しました[7]。異性のカップルでは、相手の神経症傾向が低いこと、協調性・誠実性・外向性が高いことが、本人の関係満足度と有意に関連していました[7]。開放性はこの4特性に入らず、男女や結婚の有無による有意な違いもありませんでした[7]。
似ていることの効果は小さく、向きもまちまち
Weidmannらは237組のカップルで、類似と満足度の曲線的な関係まで調べられる手法(二者の多項式回帰分析)を使いました[8]。同じ時点のデータでは、行為者効果とパートナー効果を超える類似の役割は、ごくわずかでした[8]。時間をおいた分析では、2つの類似性効果が見られました[8]。
- 二人の神経症傾向の水準が違っていると、男性の満足度が低かった
- 二人とも開放性がほどほどの水準だと、女性の満足度が高かった
似ていることの効果を報告した研究もあります。新婚夫婦を対象にした研究(N = 291)では、性格に関わる領域でプロフィール(複数の特性の得点パターン)が似ているほど、結婚生活の質が高い傾向がありました[9]。この関連は、それぞれの自己評価を統制しても有意でした[9]。逆に、長年連れ添った夫婦(開始時に40代と60代)を12年間追った研究では、ビッグファイブ全体が似ているほど、満足度の推移がより下向きでした[10]。
このように、似ていることの効果は研究によって向きが異なります。カップルの研究をまとめたレビューも、二人それぞれの性格を統制すると、性格の類似は満足度と関係しないようだと結論づけています[11]。
性格より強い手がかりは「関係の受け止め方」
Joelらは、29の研究室による43の縦断研究(11,196組のカップル)のデータを、機械学習(ランダムフォレスト)で分析しました[12]。
- 関係そのものの受け止め方:調査開始時の関係の質のばらつきを最大45%、各研究の終了時には最大18%説明[12]
- 個人差(人生満足度、否定的な感情、抑うつ、愛着の傾向など):同じく21%と12%[12]
特に重要だったのは、相手が関係に真剣だと感じられるか、感謝、性的な満足、相手が満足していると感じられるか、対立でした[12]。本人が答えたこうした受け止め方がわかれば、相手の回答も、性格などの個人差も、予測に新しい情報を加えませんでした[12]。また、関係の質がその後上がるか下がるかは、本人が答えたどの変数の組み合わせからもほとんど予測できませんでした[12]。
HEXACOの研究でわかっていること:「正直さ-謙虚さ」と「経験への開放性」
6因子のうち、夫婦や親しい人の研究で目立つのが、正直さ-謙虚さ(Honesty-Humility)と経験への開放性(Openness to Experience)です[13, 14]。
実際の類似と「似ていると見る」傾向
Lee、Ashton、de Vriesは、オランダの異性の夫婦451組(N = 902、平均年齢55歳、平均の交際期間28年)に、自分と配偶者の性格をHEXACOの尺度で評価してもらいました[13]。実際の類似性も想定された類似性も、ある程度高かったのは次の2因子だけでした[13]。
- 正直さ-謙虚さ:実際の類似性 r = 0.39、想定された類似性 r = 0.57[13]
- 経験への開放性:実際の類似性 r = 0.36、想定された類似性 r = 0.41[13]
想定された類似性(assumed similarity)は、自分の自己評価と、自分による相手の評価との似ている程度で、「相手を自分に似ていると見る度合い」です[14]。
よく知り合った大学生のペアを調べた2009年の研究でも、同じ2因子で、控えめな類似(r ≈ .25)と想定された類似性(r ≈ .40)が見られました[14]。この2因子は個人の価値観と最も強く関連し、想定された類似性は、ただの知り合いより親しい友人どうしでかなり強くなっていました[14]。著者らは、価値観に関わり自分らしさの中心になる特性に限って、親しい相手との類似性を過大に見積もる傾向があると解釈しています[14]。
理想の相手像と、満足している人の見え方
4か国の独身者を調べた2018年の研究(5つの研究、計900人以上)では、理想の相手に自分との類似を望む傾向がすべての因子で見られ、特にこの2因子で目立ちました[15]。
2022年の研究は、ブリテン諸島、中国、デンマークのデータ(N = 1,196)を分析しました[16]。親密な相手を自分に似ていると見る傾向は、この2因子でほかの4因子より高くなっていました[16]。この結果は、平均的な性格像との重なり(規範性)を差し引いたうえでのものです[16]。関係の満足度やコミットメント(関係を続けようとする気持ち)が高い人ほど、この傾向は強めでした[16]。相関の研究なので、どちらが原因かはわかりません。
正直さ-謙虚さと夫婦の満足度:二人の効果を分けた研究はまだ少ない
HEXACOモデルで夫婦の満足度を調べた研究は少ないと、ジョージアの夫婦87組(N = 174)の研究の著者らも述べています[3]。この研究は、ジョージア語版のHEXACO-60と、2つの効果を分けて推定する手法(APIM)を使っています[3]。
- 夫の正直さ-謙虚さが高いほど、夫自身の満足度(b = .29, p = .045)と妻の満足度(b = .30, p = .039)が高かった[3]
- 妻の正直さ-謙虚さは、どちらの満足度とも有意に関連していなかった[3]
- 夫婦の正直さ-謙虚さの相関は −.04で、有意ではなかった[3]
- 正直さ-謙虚さの差が大きいほど妻の満足度が高いという相関(r = .32)が見られた。夫では見られなかった(r = .01)[3]
- 情緒性・誠実性・経験への開放性でも、差が大きいほど双方の満足度が高い傾向があり、著者らは相補性仮説を支持する結果と解釈した[3]
正直さ-謙虚さが似ている夫婦ほど満足度が高いという結果は出ず、妻ではむしろ逆向きでした[3]。ただし、一時点の自己報告式の調査で、人数が少なく、高学歴の人が多く、結婚期間の影響も統制されていません[3]。著者ら自身も、応答曲面分析などのより正確な方法があると述べています[3]。
MBTIの「相性表」に研究の裏付けはあるか
インターネットでは、16タイプどうしの相性を一覧にした「相性表」をよく見かけます。ここでは、公式のMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)の研究と、性格をタイプに分ける考え方についての研究を紹介します。これらの結果を、16Personalitiesなどの無料の16タイプ診断にそのまま当てはめることはできません。
タイプどうしの相性を考えるには、人がはっきりしたタイプに分かれることが前提になります。McCraeとCostaは、19〜93歳の男性267人・女性201人のデータでこの点を調べました[17]。その結果、MBTIが本当に2つに分かれる好みや、質的に異なるタイプを測っているという見方は支持されませんでした[17]。MBTIの4つの指標は比較的独立した次元で、ビッグファイブの5つの次元のうち4つの側面を測っていました[17]。Pittengerも、MBTIにはいくつかの心理測定上の限界があり、4文字のタイプから推論するときにはかなりの慎重さが必要だと指摘しています[18]。
夫婦のMBTIタイプと満足度を調べた研究に、韓国のカップル向けクリニックを訪れた62組の研究があります[19]。夫婦のタイプが似ているかどうかで、結婚の満足度、ポジティブな感情、対立の調整に有意な差はありませんでした[19]。一方、S-N指標(感覚と直観)が似ているかどうかで、夫の離婚傾向には差が見られました[19]。夫婦のどちらかがISTJまたはESTJのカップルでも、離婚傾向・ポジティブな感情・対立の調整に、ほかのカップルとの差がありました[19]。著者は、配偶者間のタイプの違いが夫婦関係に影響すると結論づけています[19]。ただし、相談に訪れた夫婦62組という1つの小規模な研究で、差が出たのは一部の指標に限られます。
MBTIではなくビッグファイブから性格タイプを作った研究もあります。133組のカップルで、二人のタイプが似ていることは、男女どちらの満足度にも影響していませんでした[20]。自己評価による性格は満足度の予測にほとんど役立たず、満足度は主に、パートナーからその人の性格がどう評価されているかと関係していました[20]。
このように、タイプの組み合わせで相性が決まるという考えを一貫して裏付ける結果は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。一方で、相性表をきっかけに、お互いの違いを話題にして楽しむ人もいるでしょう。読み物として楽しみつつ、相手との関係を判断する材料にはしないのがよさそうです。MBTIの4指標とビッグファイブ・HEXACOの関係は、MBTIの4指標はビッグファイブ・HEXACOのどこに対応する?で解説しています。
研究から考える、関係に生かすヒント
研究から考えられる手がかりを4つ挙げます。結果を約束するものではありません。
- まず自分の傾向を知る:満足度との関係は、相手との組み合わせよりも自分の性格(行為者効果)のほうが大きいと報告されています[1]。どんな場面で不安やいら立ちを感じやすいかを知ることは、自分のふるまいを振り返る手がかりになるかもしれません。
- 「相性」より、関係の受け止め方に目を向ける:関係の質と強く結びついていたのは、相手が関係に真剣だと感じられるか、感謝、対立など、関係そのものの受け止め方でした[12]。感謝を伝えるといった行動の効果をこの研究が確かめたわけではありません。それでも、相性を気にするより、お互いが関係をどう感じているかに目を向けるほうが、研究結果に近い考え方です。
- 価値観に関わる話題は、言葉にして確かめる:正直さ-謙虚さと経験への開放性は価値観との関わりが深く、親しい相手を実際以上に自分と似ていると見がちな領域だと解釈されています[14]。当サイトの診断では、正直さ-謙虚さを誠実さ・公正さ・貪欲回避・謙虚さのファセットで測っています。経験への開放性は、美的評価・探究心・創造性・非慣習性です(HEXACOの24ファセット一覧)。お金やルール、新しい経験への考え方は、「きっと同じ」と思い込まずに話してみると、違いに早く気づけるかもしれません。
- スコアで相手を選んだり、比べたりしない:性格の得点は、相手を選別したり順位をつけたりするためのものではありません。性格が似ているかどうかが満足度を大きく左右するわけではないことは、ここまでの研究からうかがえます[1, 11]。HEXAINSIGHTの診断にも、二人の相性を点数で判定する機能はありません。
注意点:研究の限界
- 相関を調べた研究が中心です。性格が満足度を生む原因なのか、満足度が性格の見え方を変えるのかは、これらの研究だけでは決められません。
- 対象者の国に偏りがあります。大規模な研究はオーストラリア、イギリス、ドイツ、オランダなどのデータで[1, 13]、ジョージアと韓国の研究は小規模です[3, 19]。
- 日本の夫婦66組の研究では、夫の神経症傾向が妻の結婚満足度と、妻の外向性が夫の結婚満足度と関連していました[21]。ただし、性格の類似と満足度を日本のカップルで調べた研究は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。
- 多くは自己報告式(本人が質問に答える形式)のデータです。
- 「似ている度合い」の測り方は難しい問題です。二人の得点の差をそのまま使う方法のほかに、プロフィールの類似、多項式回帰、応答曲面分析などの方法があり、指標によって結果の見え方が変わることもあります[3, 8, 9]。
- 紹介した数字は、多くのカップルの平均的な傾向です。個々のカップルにそのまま当てはまるとは限りません。
- HEXAINSIGHTの診断(96問)は、公式のHEXACO-PI-Rとは別の、独自に作成した質問項目による診断です。
まとめ
- 3か国の大規模な夫婦調査では、一人ひとりの性格の影響を除くと、満足度のばらつき(個人差)のうち、似ている度合いで説明できたのは0.5%未満でした。
- 似ていることの効果は研究によって向きが異なり、関係の質とより強く結びついていたのは関係そのものの受け止め方でした。
- すでに関係のある二人では、実際に似ているかより「似ていると感じる」ことのほうが、惹かれる気持ちと結びついていました。
- HEXACOでは、正直さ-謙虚さと経験への開放性が似やすく、似ていると見られやすい傾向があります。満足度との関係はまだはっきりしていません。
- タイプの組み合わせで相性が決まるという考えを、一貫して裏付ける結果は確認できませんでした。
相手との組み合わせを判定するためではなく、自分の傾向を知り、二人で価値観について話すきっかけとして、無料のHEXACO性格診断(96問)をお試しください。
参考文献
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