HSP(繊細さん)は診断名?特徴と神経症傾向・HEXACOの情緒性との関係を研究で解説
HSP(Highly Sensitive Person、繊細さん)は医療の診断名ではなく、研究では「感覚処理感受性(SPS)」と呼ばれる気質として扱われています[1, 2]。SPSはビッグファイブの神経症傾向と中程度からやや強く関連しており、どこまで別の特性といえるかは研究者の間でも議論があります[2–4]。HSP尺度とHEXACO(ヘキサコ)モデルの関係を調べた研究もありますが[4]、HEXACOの診断でHSPかどうかはわかりません。
この記事では、研究でわかっていることと、まだわかっていないことを分けて整理し、暮らしの工夫と相談の目安も紹介します。
HSP(繊細さん)とは:研究上の名前は「感覚処理感受性」
HSPは心理学が発祥の言葉で、ルーツは1996年にアメリカの臨床心理学者エレイン・アーロン(Elaine N. Aron)が出版した一般向けの本です[1]。学術論文としては、翌1997年に E. アーロンと A. アーロンが発表した論文が最初です[1]。その本の日本語訳は2000年に出ています[1]。
1997年の論文は7つの研究をまとめたものです[5]。「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)の高さ」という1つの中心的な特性を見いだし、それを測る27項目の質問紙「HSP尺度(Highly Sensitive Person Scale)」を作りました[5]。また、それまで混同されがちだった内向性や、否定的な感情の起こりやすさ(原文は emotionality)から、SPSが部分的に独立していることを示しました[5]。この emotionality を、レビュー論文は神経症傾向として紹介しており[2]、HEXACOモデルの「情緒性」のことではありません。
研究では「環境感受性(environmental sensitivity)」という概念も使われます。よい環境と悪い環境の両方からの影響の受けやすさを表す言葉で、「HSP」はそれが比較的高い人を指す便宜的な呼び名だと説明されています[1]。
研究で挙げられている4つの特徴
レビュー論文では、SPSの理論上の特徴(仮説)として、次の4つが挙げられています[2]。
- 情報を深く処理する(depth of information processing)
- 感情の反応が強く、共感しやすい(emotional reactivity and empathy)
- 環境のささいな変化に気づきやすい(awareness of environmental subtleties)
- 刺激を受けすぎやすい(ease of overstimulation)
2019年のレビューの時点では、ささいな変化への気づきと感情の反応の強さには行動研究の裏付けがある一方、深い処理・共感・刺激の受けすぎは、まだ直接には調べられていないとされていました[2]。
アーロンはこれらを、英語の頭文字をとった「DOES」(Depth of Processing、Overstimulation、Emotional Reactivity、Sensing the Subtle)というモデルにまとめています[6]。このモデルをもとに、4つの側面を測る研究用の尺度(20項目)も作られています[6]。
HSPは病気や障害ではない
HSPは、精神疾患の診断基準であるDSM-5に載っておらず、疾患名ではありません[1]。レビュー論文でも、SPSは気質(temperament)の特性であって、障害(disorder)ではないとされています[2]。
飯村(2022)は、インターネットでHSPを検索するとクリニックのサイトが上位に表示されるため、HSPを新しい病気の名前だと思う人がいるかもしれない、と述べています[1]。「HSP診断」という言葉を見かけても、それは医療の診断ではない点に注意しましょう。
遺伝の影響
SPSは中程度に遺伝するとされています[2]。英国の10代の双子2,868人を対象に、子ども用の尺度を使った研究では、感受性のばらつきの47%が遺伝で説明され、残りは一人ひとりに固有の環境(測定の誤差を含む)で説明されました[7]。生まれつきですべてが決まる、とは言えません。
「5人に1人」は本当?HSPの割合は研究によって違う
よく聞く「5人に1人」に近い数字は、研究の文献にもあります。初期の研究では人口の約15〜20%がSPSの高い人だと推定され、文献ではおおよそ20%とされてきました[2]。
一方で、統計的な方法で人をグループに分ける研究も行われています。米国の大学生906人のHSP尺度の回答を、潜在クラス分析(回答のパターンから人をいくつかのグループに分ける方法)で調べた研究があります[8]。感受性が低い群・中くらいの群・高い群の3つに分ける見方が最もよく当てはまり、割合はおよそ3割・4割・3割でした[8]。著者らは、それぞれをタンポポ(低い群)、チューリップ(中くらいの群)、ラン(高い群)にたとえています[8]。ただし、回答の形式を変えた別のデータでは、3群に分ける統計的な根拠ははっきりしなかったものの、3群の分かれ方そのものは主な分析とほぼ同じだったと報告されています[8]。
子どもや10代でも調べられています。英国の8〜19歳の4つのサンプル(合計3,581人)に子ども用の尺度を使った研究では、高い群が20〜35%、中くらいの群が約41〜47%、低い群が約25〜35%でした[9]。このように、「感受性が高い人」の割合は、研究の方法や対象によって変わります。
「HSPか、そうでないか」の二択ではない
感受性は、多くの人が平均の近くに集まる「正規分布」に近い、連続した特性だと考えられています[1, 2, 8]。3つのグループは、その連続した分布の中に見いだされたもの、という位置づけです[2, 8]。
飯村(2022)も、平均値付近の人が最も多いことを挙げ、「HSPか非HSPか」と分けられるほど性格は単純ではないと述べています[1]。
セルフチェックの結果をどう受け止めるか
研究で使われるHSP尺度は、27項目の自己報告式の質問紙です[2]。先の研究では、グループを分ける区切りの点も示されましたが、著者ら自身が、おおよその目安にすぎず、集団によって違いうると書いています[8]。
また、尺度の中の3つの側面(下位尺度)は、はじめから狙って作られたものではありません[2]。分析の結果として見いだされたもので、生物学的な裏付けははっきりしていません[2]。レビュー論文の著者らも、SPSをより信頼でき、より客観的な方法で測ることを課題に挙げています[2]。
研究用の尺度にもこうした限界があります。ネット上の「HSP診断」の結果は、HSPかどうかの判定ではなく、自分の感じ方の傾向を考える手がかりとして受け止めるのがよいでしょう。
研究でわかっていること:ビッグファイブの神経症傾向・開放性との関係
以下の相関係数 r は−1〜1の値をとり、0から離れるほど関連が強く、マイナスは一方が高いほど他方が低いことを表します。
メタ分析:神経症傾向と中程度、開放性とは弱い関連
Lionetti ら(2019)は、SPSとビッグファイブの関係について、8本の論文(合計6,790人)のメタ分析(複数の研究の結果を統計的にまとめる方法)を行いました[3]。
大人では、SPSは神経症傾向(Neuroticism)と r = 0.40、開放性と r = 0.14 の相関がありました[3]。外向性・協調性・誠実性とは関連していませんでした[3]。子どもでは、神経症傾向と r = 0.42 の相関があり、ほかの4つの特性とは関連していませんでした[3]。
日本語版でも似た結果が出ています。髙橋(2016)は、日本の大学生・専門学校生のデータから、27項目の日本語版を19項目に絞った「HSPS-J19」を作りました[10]。その合計点は、神経症傾向と r = .58(216人)、別の質問紙(EPI)の神経症傾向と r = .60(153人)の相関がありました[10]。
12項目の短縮版HSP尺度を使った英国の大学生230人の分析では、合計点は神経症傾向と r = 0.56、外向性と r = −0.24 の相関があり、開放性とは関連していませんでした(r = 0.01)[8]。開放性との関連は、大人のメタ分析でも小さく、研究によっては見られません[3, 8]。
SPSは独立した特性か:研究者の間の議論
このように、神経症傾向との相関は r = 0.40〜0.60程度です[3, 8, 10]。2019年のレビューは、SPSがほかの気質や性格の概念とは異なることを示す証拠が増えているとしています[2]。一方で Gubler ら(2025)は、SPSは既存の性格特性との重なりが大きいという批判が強まっており、測定の誤差を考えると、SPSの側面が神経症傾向や開放性と完全に重なるという報告もあると述べています[4]。
3つの側面で、神経症傾向との関連が違う
HSP尺度の分け方として、心理測定の面で最も支持されているのは、次の3つの側面です[2]。日本語版でも、同じ3つの因子が見いだされています[10]。
- 易興奮性(Ease of Excitation)
- 低感覚閾(Low Sensory Threshold)
- 美的感受性(Aesthetic Sensitivity)
易興奮性と低感覚閾は、ネガティブな感情や不安、抑うつと中程度の関連があります[2]。一方、美的感受性はポジティブな感情と関連し、ネガティブな感情とは関連していないと報告されています[2]。英国の研究でも、神経症傾向との相関は、易興奮性で0.58、低感覚閾で0.40、美的感受性で0.15でした[8]。日本語版でも、美的感受性の因子は神経症傾向とほとんど関連していませんでした(ただし、この因子は研究によって安定しなかったとも報告されています)[10]。
つまり、「HSP=不安になりやすい人」とひとまとめにはできません。
感受性が高い人の中にも、違うグループがある
Bürger ら(2024)は、ドイツ語圏で主にHSPの情報サイトを通じて集めた2つのサンプル(1,102人と526人)を分析しました[11]。感受性と性格のパターンから人をグループに分けたところ、感受性が高い人の中に、性質の違う2つのグループが見つかりました[11]。
- 傷つきやすい感受性の群(Vulnerable Sensitivity):神経症傾向が平均より高く、外向性が平均より低く、開放性はやや高い[11]
- 自信のある感受性の群(Confident Sensitivity):神経症傾向は平均的で、開放性が平均よりはっきり高く、外向性はやや高い[11]
著者らは、HSPすべてに当てはまるとされがちな特徴が、グループによって違うと結論しています[11]。1997年の最初の論文でも、感受性の高い人には2つのまとまりがあるようだと報告されていました[5]。
HEXACOの「情緒性」とビッグファイブの「神経症傾向」はどう違う?
HEXACOモデルは、性格を6つの因子でとらえる枠組みです[12]。ビッグファイブ(性格の5因子モデル)に代わるモデルとして提案されています[12]。6因子の1つ「情緒性(Emotionality)」は、名前から神経症傾向と同じものと思われがちですが、中身は同じではありません。
情緒性の4つのファセット
情緒性は、次の4つのファセット(因子を構成する、より狭い特性)からなります[13]。
- 恐怖心(Fearfulness):恐怖を感じやすい傾向[13]
- 不安感(Anxiety):いろいろな場面で心配しやすい傾向[13]
- 依存性(Dependence):人からの心の支えを必要とする傾向[13]
- 感傷性(Sentimentality):人との情緒的な結びつきを強く感じる傾向[13]
公式の説明では、情緒性がとても高い人は、身体的な危険を怖がり、生活上のストレスに不安を感じ、人からの心の支えを必要とし、人への共感や情緒的な愛着を持つとされています[13]。この説明には、怒りやいらだちは含まれていません[13]。
各ファセットの詳しい意味は、HEXACOの24ファセット一覧で解説しています。
神経症傾向との違い:怒りと人とのつながり
Watson(2021)の紹介によると、ビッグファイブ(5因子モデル)の神経症傾向は、Costa と McCrae の枠組みでは、不安、敵意(angry hostility)、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさの6つのファセットで構成されています[14]。
つまり、怒りは神経症傾向には含まれますが、情緒性の4つのファセットには含まれません[13, 14]。反対に、人とのつながりに関わる感傷性と依存性は、情緒性に含まれています[13]。
重なりはあるが、同じではない
カナダの大学生425人を対象にした研究では、HEXACOの情緒性と、ビッグファイブの質問紙(BFI)の神経症傾向の相関は r = .55でした[14]。ほかの2つの神経症傾向の尺度とも r = .48、.50 の相関がありました[14]。重なりは大きいものの、同じではないことがわかります。
HEXACOモデルとビッグファイブの全体的な違いは、HEXACOモデルとはで紹介しています。
HSP尺度とHEXACOの関係を調べた研究
HSP尺度とHEXACOの関係は、Gubler ら(2025)が1,630人を対象に調べています[4]。抄録によると、HSP尺度の3つの側面には、神経症傾向、経験への開放性、傷つきやすい自己愛(vulnerable narcissism)が有意に関連していました[4]。易興奮性と低感覚閾には傷つきやすい自己愛が、美的感受性には経験への開放性が、最も強く関連していました[4]。
ただし抄録では「神経症傾向(neuroticism)」という言葉が使われており、HEXACOの情緒性についての個別の結果は示されていません[4]。著者らは、この結果は「SPSは既存の性格の枠組みとは別の特性だ」という考えへの批判を支持すると述べています[4]。
HEXAINSIGHTの診断(96問)は、公式のHEXACO-PI-Rとは別の、独自の質問項目による診断です(運営者情報)。情緒性の4つのファセットは測りますが、HSPかどうかを判定するものではありません。情緒性が高いことを「HSPである」と読み替えないようにしてください。
HSPの傾向を感じる人が暮らしの中でできること
「良くも悪くも」環境の影響を受けやすい
レビュー論文は、SPSが高い人は、よくない環境ではストレスに関わる問題のリスクが高まる一方、前向きで支えのある経験からはより多くの恩恵を受けやすい、とまとめています[2]。ただし、よい経験での違いが見られなかった研究もあり、結果は一様ではありません[2]。
飯村(2022)も、「HSPは生きづらい」という説明は一面的だと指摘しています[1]。合わないストレスの多い環境ではつらくなりやすいものの、よい環境では感受性の低い人より生きやすくなる傾向もある、という考え方です[1]。
環境の側を整える工夫
この考え方に立つと、「自分を変える」ことだけでなく、「自分に合う環境を整える」ことにも目を向けられます。以下は、研究で効果が確かめられた方法ではなく考え方の例で、どれが合うかは人によって違います。
- 疲れやすい場面を書き出す:人の多さ、音、予定の詰まり具合など、何が負担になっているかを把握する
- 刺激の量を調整する:予定と予定の間に休む時間を入れる、静かに過ごす時間をつくる
- 話せる相手を持つ:つらさを一人で抱えず、信頼できる人に話す
- よい面にも目を向ける:感受性の高さは、支えのある環境ではプラスに働くこともあります[2]
心理的な支援とマインドフルネス
レビュー論文は、SPSの高い人は心理的な支援(介入)からより多くの恩恵を受けることが示されている、とまとめています[2]。ただし、その根拠は主に、学校で行われた子ども・10代向けのプログラムの研究です[2]。そのうえでレビュー論文は、マインドフルネスやアクセプタンス(受け入れ)に基づくプログラムが役立つ可能性を挙げています[2]。
注意点:HSPという言葉との付き合い方と、専門家に相談する目安
ラベルとして人に当てはめない
HSPという言葉は、自分の感じ方を言葉にする助けになることがあります。一方で、他人を「HSPだから」と決めつけたり、自分の可能性を狭めたりするラベルにはしないようにしましょう。飯村(2022)は、HSPの広まり方を、かつての血液型性格診断のブームになぞらえて「ポップ化」と表現しています[1]。
研究の限界
ここで紹介した研究の多くは、HSP尺度(27項目版や短縮版、子ども用の尺度、翻訳版)による自己報告に基づいています[2, 8, 10]。対象者も、米国・英国・カナダの大学生[8, 14]や、日本の大学生・専門学校生[10]が中心です。年齢や国、職業を越えて、そのまま当てはまるとは限りません。メタ分析の論文でも、発達や測定に関する論点が議論されています[3]。
つらさが続くときは、HSPのせいだと片付けない
レビュー論文は、SPSが高い人も、どんな疾患も持ちうると述べています[2]。そのうえで、人口の3分の1近くがSPSの高い人に当たりうることから、SPSそのものは障害ではないと考えられるとしています[2]。
気分の落ち込みや不安が続き、仕事や生活に支障が出ているときは、「HSPだから仕方ない」と自分で片付けず、医療機関や相談窓口に相談してください。 厚生労働省の「こころの耳」には、うつ病の解説とあわせて、相談窓口の案内や医療機関を探すページへのリンクがあります[15]。厚生労働省の「まもろうよ こころ」では、電話・SNS・チャットの相談窓口が紹介されています[16]。たとえば「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)は、都道府県によって受付時間が異なり、050で始まるIP電話からはつながりません(IP電話に対応した窓口の番号も案内されています)[16]。
この記事も、HEXAINSIGHTの診断も、医療上の診断ではありません。
まとめ
- HSP(繊細さん)は医療の診断名ではなく、研究では「感覚処理感受性(SPS)」という気質として扱われています。
- 感受性は連続した特性で、「感受性が高い人」の割合は15〜20%、約3割など研究によって幅があります。
- SPSは神経症傾向と中程度からやや強く関連し、独立した特性といえるかには議論があります。
- HEXACOの情緒性も神経症傾向と同じものではなく、HEXACOの診断でHSPかどうかはわかりません。
- つらさが続くときは、HSPのせいだと片付けず、専門家や相談窓口に相談しましょう。
情緒性の4つのファセットを含め、自分の性格の傾向を確かめたい方は、無料のHEXACO性格診断(96問・約10〜15分)をお試しください。HSPかどうかを判定するものではありませんが、自分の傾向を考える材料になります。
参考文献
- 飯村周平 (2022). 最近よく聞く“HSP”ってなんですか? 心理学ワールド, 98, 30–31. 日本心理学会. https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2022/07/98-30-31.pdf(閲覧日:2026-10-11)
- Greven, C. U., Lionetti, F., Booth, C., Aron, E. N., Fox, E., Schendan, H. E., Pluess, M., Bruining, H., Acevedo, B., Bijttebier, P., & Homberg, J. (2019). Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 98, 287–305. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2019.01.009
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